ポイント
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広帯域0.1 THz~2.8 THzで、計測精度16桁のテラヘルツ周波数カウンタを開発
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半導体超格子ハーモニックミキサを用いて小型化・室温動作を実現
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Beyond 5G / 6G時代の様々な産業・研究に貢献する計量標準技術を確立
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)は、半導体超格子ハーモニックミキサを用いたテラヘルツ波用の周波数計測システムを開発し、電波の上限帯域を網羅する0.1 THz~2.8 THzという広帯域において精度16桁の計測を実現しました。今回の開発により、小型・室温下で動作する広帯域・高精度なテラヘルツ周波数カウンタが実現したことになります。
本技術は、未開拓周波数領域と呼ばれてきたテラヘルツ帯を次世代情報通信基盤Beyond 5G / 6Gにおける新たな電波資源として利活用するための計量標準技術です。今後、Beyond 5G / 6G時代における電波産業などの様々なニーズに対応し、本技術をNICTで提供している周波数標準器の較正サービスに活用していく予定です。
なお、本成果は、2021年7月19日(月)に、計量学分野のトップジャーナルである国際学会誌Metrologiaに掲載されました。
背景
次世代情報通信基盤Beyond 5G / 6Gの貴重な周波数資源として、未開拓周波数領域と呼ばれてきたテラヘルツ帯の利活用に高い関心が寄せられています。テラヘルツ帯を有効利用するには、スマートフォンなどで利用されているマイクロ波・ミリ波帯の電波資源と同様、様々な産業や研究に向けて周波数バンドを正確に区分でき、適正な運用を可能にする計量標準技術の確立が重要です。
これまで、テラヘルツ周波数計測システムの多くは、高感度化のために大型の低温装置や複雑な機構を持つ超短パルスレーザーを必要としていました。そのため、小型化が難しく、装置のオペレーターには光学機器の取扱いが求められました。また、計測は可能だが動作帯域が狭い、若しくは、動作帯域は広いが計測限界が未確認など、装置の動作帯域と計測精度に関する包括的評価も十分でなく、実用化を視野に入れた際に解決すべき課題が残されていました。
今回の成果
NICTは、テラヘルツ波の計量標準技術として、半導体超格子ハーモニックミキサを用いたテラヘルツ周波数カウンタを開発し(図1参照)、4オクターブを超える広帯域0.1 THz~2.8 THzにおいて精度16桁の計測を実現しました(図2参照)。
今回、超格子構造を持つ半導体ハーモニックミキサをキーデバイスとして採用することで、入力したマイクロ波帯の局部発振器信号を基にテラヘルツ基準を等間隔に多数生成し、それらを広範囲に分布した「精密な目盛り」にしてテラヘルツ波の周波数測定を実現しました。従来システムで装置の小型化と運用コスト削減の障壁になっていた超短パルスレーザーが不要となっただけでなく、原子時計からのマイクロ波標準信号を直接入力して使えるため、堅牢でより信頼性の高いテラヘルツ周波数の較正も可能になりました。
今回、テラヘルツ周波数カウンタの測定性能は、従来は不可避であった被測定テラヘルツ発振器の雑音に影響されないように設計・構築した評価系を使って確認しました(補足資料参照)。その結果、本カウンタ1台だけで電波法で定義された電波の上限帯域を幅広く網羅しつつ、計測精度が16桁に到達することを実証しました。これは、1 THzの電波周波数を100μHz(1 THzの1016分の1)以下の精度で決定できることに相当します。これらの性能は、小型かつ室温動作するテラヘルツ周波数カウンタの動作帯域幅と計測精度として、共に世界トップの性能です。
今後の展望
NICTは、情報通信技術による革新といえるBeyond 5G / 6G世界の実現を目指し、未開拓周波数領域であるテラヘルツ帯を新たな電波資源として積極的に利活用するための計量標準技術の開発に取り組んでおり、今回開発した超高精度・広帯域の小型テラヘルツ周波数カウンタを活用して、Beyond 5G / 6G時代の様々な産業や研究を支える技術基盤を確立することに貢献します。特に、電波産業などの様々なニーズに応えるべく周波数標準器の較正サービスの拡大に取り組んでいくと同時に、NICT発のテラヘルツ標準技術のグローバルな普及を目指します。
論文情報
論文名: Terahertz frequency counter based on a semiconductor-superlattice harmonic mixer with four-octave measurable bandwidth and 16-digit precision
掲載誌: Metrologia, Vol. 58, No. 5, October 2021
著者: Shigeo Nagano, Motohiro Kumagai, Hiroyuki Ito, Yuko Hanado and Tetsuya Ido